日本に初めてきた時の国民年金保険

入社してしばらくすると、初めて日本で生活をする外国籍社員に日本年金機構からお知らせが届きます。
日本語が読めない(読めても難しい日本語がわからない)社員にしてみると、何のお知らせだかわからない…そういった場合、「Pensionに関する手紙が届いた、どうすればいい?」と大概労務担当に相談しにきます。

まずそもそもですが、国民年金はあくまでも本人が対処するべきことになっています。会社にしてみれば、雇用している人を厚生年金保険に加入させれば立派に義務は果たしている訳です。
なので、It's your responsibility. と突き放すものも選択肢の一つ。ただ、年金機構で英語話せる人ほとんどいないし、日本人でもまともに年金制度を理解していないのにわからないよね…😇となる訳です。
(会社の規模がある程度小さい&工数的に余裕があるから言えることだとは思いますが)この程度のサポートで信頼してもらえる(下心丸出しで言うと恩を売れる)のであればサポートする価値はあるのかなと個人的には思います。

サポートするのかしないのかの判断をする、本人の負担感を知るために実際にどういった手続きが必要かざっと以下に書き出してみました。

1) まずは同封されている書類を冷静に確認


通常以下のもの+αが郵送されています。
※封書で案内がきているケースをご紹介しています。ハガキで未加入期間をお知らせされる場合もあります。

届出はお済みですか(国民年金加入のご案内)

届出はお済みですか(国民年金加入のご案内)

届出はお済みですか(国民年金加入のご案内)

大体の場合、最初の□の欄は「[未加入期間国民年金適用推奨]に該当します」になっているかと思います。要は「年金機構が把握しているあなたが年金を払わなければならない期間、あなたは年金に加入していないですよ」と言うお知らせです。

確認するべきなのは第二号被保険者期間に関する記録。4項目記載されているはずです。

第2号被保険者期間に関する記録

第2号被保険者期間に関する記録

制度名
(1個目)
多くの場合は「20歳到達」になっています。
年金機構にしてみると急に今まで台帳に存在していなかった人が厚生年金に加入したことによって、浮上した訳です。いつから国民年金加入をしなければならなかったのか把握するすべもないので、「ずっと日本にいて、国民年金に加入するべきタイミングでしなかった人」として登録されます。
あるいは入国日になっている可能性もあります。年金機構は(頻度・タイミングは不明ですが)市区町村より提供される住民台帳と年金機構の台帳を突合させています。そのため年金機構の台帳にはないけれど、住民台帳には記載のある人に対しても案内を送ってきます。その場合は住民票に記載のある入国日情報が記載されます。
資格喪失年月日 国民年金に加入しなくていい権利を喪失した日。上記の制度名が20歳到達の場合は20歳に到達した日の翌日です。住民票を置いた日(入国日)の場合もあります。
制度名
(2個目)
新しく取得した制度名。つまり入社したことで加入させた厚生年金保険が記載されているはずです。
資格取得年月日 新しく取得した日。会社で厚生年金に加入した日付が記載されているはずです。

 

国民年金被保険者関係届出書

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国民年金被保険者関係届出書
後ほど使用する(かもしれない)ので一旦放置。

 

知っていますか?国民年金保険料の免除制度

知っていますか?国民年金保険料の免除制度

知っていますか?国民年金保険料の免除制度
使わないものの読んだ方が学びにはなるので捨てずに一旦放置。(読まなくてもなんとかなる)

 

2) 国民年金に加入しなければならない期間があるかを把握する

※釈迦に説法かもしれないので、国民年金加入の条件に関してつらつら書きますが、不要な方は読み飛ばしてください。

そもそも日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満の方は国籍関係なく国民年金保険に加入しなければならない決まりです。つまり、雇用した外国籍社員は日本に入国し、居住者になった時点から何かしらの年金保険に加入しなければならないことになります。 大方のケース、入社日に日本に入国することはなく、引っ越しだったり諸々の準備をするために早めに日本に渡航してきます。

金保険料には日割計算といったような考え方はなくその月の月末に年金保険に加入しなければいけない状態であれば、まるっとその月の保険料を支払わなくてはならなくなります。つまり、例え1月31日に入国して1月に1日しか日本にいなかったとしても1月の保険料を支払わなくてはならなくなります。

 

3) 国民年金に加入しなければならない期間があったらその期間の処理をどうするのか考える

前述した通り、あくまでも国民年金保険は個人の責任なので外国籍社員に取り得るオプションを提示して自分で選択してもらいます。オプションとしては3つ。

  1. 素直に国民年金保険料を支払う
    一番シンプル。「払ったらいいことある?」と聞かれることが多いのですが、将来の年金額に影響してくるよ。でも1ヶ月分の保険料でどれくらい影響が出るかと言われると…といつも口籠ってしまいます。
     
  2. 免除制度の申請を行う
    国民年金保険には前年の年収が既定の収入に満たない場合に保険料を免除してもらえる免除制度があります。
    中途入社で入社してくる外国籍社員はもちろん収入があるはずなのですが、ここで言う収入が既定以下かの収入は日本国内での収入になります。なので、外国から転入してきた外国籍社員の多くは免除申請をすることができます。
    あくまでも保険料の免除なので、加入することを免除される訳ではありません。なので、加入期間には免除申請を行った期間もカウントされます。加入期間が影響するものとして脱退一時金の申請、日本及び社会保障協定適用国での年金受給資格要件あたりです。
     
  3. 無視する
    おすすめではない!ということを強調した上で提示するオプション。
    私が敢えてこのオプションを提示する理由としては「あなたの義務なので私たちは口出ししません」と言うことを明示的に示すことと、日本人全員がきちんと処理している訳ではないので、後ほど「え、私は払ってないけど大丈夫だよ」ってどこかで見聞きしても責められないためです。
    将来的に永住権の申請を考えている人は公的年金制度に加入していたかどうかを申請の際に照会される傾向に近年はあるため無視だけはしない方が良いでしょう。

 

4) 必要書類を記入&添付資料を準備する

国民年金被保険者関係届書(申出書)(ダウンロードはこちら)

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国民年金被保険者関係届出書

「届出はお済みですか(国民年金加入のご案内)」の用紙に記載されている資格喪失日が入国した日ではなく、20歳到達した日になっている場合は「そもそもXXXX年XX月XX日まで日本国にいませんでした!」と言う情報を申告する必要があります。
喪失日がきちんと入国日になっている場合、この用紙は不要です。

左上の欄に本人署名をしてもらいます。印鑑をお持ちでない方はサインで大丈夫です。

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あとは代理記入可。
Aの欄には一通り社員の情報を記載します。

A欄


Bの欄では資格取得届の1に◯をつけて、入国した日付を記載します。入国した日付は在留カードの表面にある許可年月日を記載します。
11の外国からの転入に◯をつけます。

B欄

 

国民年金保険料免除・納付猶予申請書 (ダウンロードはこちら)

国民年金に加入しなければならない期間があって、3)で免除制度を利用すると選択した場合はこちらの申請書が必要になります。それ以外の場合、この用紙は不要です。

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国民年金保険料免除・納付猶予申請書

左上の欄に本人署名をしてもらいます。印鑑をお持ちでない方はサインで大丈夫です。
日本語が書けない人にとって住所は鬼門…なので、労務担当で書いて署名だけしてもらっています。

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あとは代理記入可。
Aの欄には一通り社員の情報を記載します。配偶者がいる場合には配偶者情報も記載しないと差し戻しされます。
重要なのは特記事項。免除申請をする年の1月1日に住んでいた住所を記載する必要があります。年金事務所が前年の収入を市区町村に照会するために1月1日に住んでいた住所を記載させるのですが、日本に居住していない場合は照会先がないため、「XXXX年1月1日 海外居住(国名)」と国外にいた旨を記載します。

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Bの欄は⑩の申請期間を記入するだけで大丈夫です。
少し厄介なのが免除申請の年度の区切り。7月から翌年6月が1年度。

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5) 年金事務所の処理が終わるのを待つ

もし申請する社員が日本語を話せなかったり、そもそも年金制度に疎くて「とりあえず言われたままにやったよ!」と言うタイプの方であれば勤務先の電話番号を記載しておくと万が一問い合わせの電話が年金事務所からきた場合、年金事務所<->社員<->労務担当者の伝言ゲームにならずに楽です。郵送してから年金事務所から問い合わせがきたケースはごく稀でした。(むしろこちらの記載ミスや書類不備で掛かってきた覚えしかない…)

郵送先は案内が郵送されてきた年金事務所か、もし記載がなければ東京事務センター宛で大丈夫です。

一旦取らなければならないアクションは以上👏

郵送後、年金事務書側で処理がされます。(たまにびっくりするくらい時間が経ってから問い合わせの電話をいただくことがあるので、すぐに処理されている訳ではないようです。)
特に免除申請を行っている場合、審査に数ヶ月かかるようです。しかも(タチの悪いことに)国民年金被保険者関係届出書は先に処理されるそうなので、入国日から入社日までの年金保険料の納付用振込用紙が免除申請がされてようがなんだろうが受け取って処理がされたタイミングで送られます。
これを納付してしまうと免除申請が認められた場合、返金を求める処理をしなくてはならなくなるので「処理が終わるまでの間で行き違いで保険料の振込用紙や督促の手紙が届くかもしれないけれども数ヶ月は我慢してね。半年以上続くようであれば問い合わせしよう!」と社員には伝えています。

免除申請が認められると国民年金保険料免除・納付猶予申請承認通知書が本人宅に郵送されます。

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「全額免除」になっているかだけ確認してもらって、保管だけしておくように社員には伝えておけば大丈夫です。

なんだかんだ長期戦だし、個々人によって状況が違うのでサポートするにしても「この手続きはあなたが自身の責任でしなければならないことで私たちは好意でサポートしています」と言うスタンスを崩さないことが大切だなと思っています。

あくまでも信頼関係を構築する一つのカードとして持っておいて損はない程度で他にもっといいカードはあるはず。ただこのカードをもっと効率的に労務担当者の負担なく切れるようにするのがみんなハッピー😋